織物用語解説

藍(アイ)
濃青色の天然染料の一。藍(タデ科の一年草、高さ50~80cm)や木藍(キアイ)などの葉や幹から得られる。インジゴ。(*2)

藍甕(アイガメ)
染料の藍汁をためておくかめ。藍壷。(*2)

藍染(アイゾメ)
藍で糸や布を染めること。また、染めたもの。(*2)

藍玉(アイダマ)
アイの葉を発酵させ、つき砕いて固めたもの。たまあい。(*2)

青縞(アオジマ)
紺色で無地の木綿織物。法被(ハッピ)・腹掛け・足袋などに用いる。(*2)

圧織(アツオリ)
合糸、撚り糸を使用した厚めの織物(工業用材料、地下タビ生地など)。(*4)

綾織(アヤオリ)
① いろいろな模様を浮き出すように織った織物。
② 斜文織(シャモンオリ)のこと。経糸(タテイト)と緯糸(ヨコイト)が交差する点が斜めの方向に並ぶ織り方。強さにおいて平織りに劣るが、光沢と伸縮性にすぐれる。サージ・ギャバジンなど。(*2)

有松絞(アリマツシボリ)
名古屋市緑区有松町・鳴海(ナルミ)町付近から産する木綿の絞り染め。浴衣地が多い。鳴海絞(ナルミシボリ)。(*2)

いざり機(イザリバタ)
織る人が足を前に出して地面や床に座って織る原始的な織機。経糸の一端につけた帯を腰に当てて織る。地機(ジバタ)。(*2)

糸繰り(イトクリ)
繭、綿花から糸を引き出して紡ぐこと。また、それをする人。(*2)

畝織(ウネオリ)
畑の畝のように、横または縦に高低をつけた織物。あぜおり。(*2)

大島紬(オオシマツムギ)
奄美大島から産出する、絣(カスリ)織りの紬。手で紡いだ糸を、当地産のティーチキという植物の煮出し液と、泥の中で鉄塩とで茶色に染めて織る。(*2)

筬(オサ)
織機の付属具。竹または金属の薄片を櫛の歯のように並べ、枠をつけたもの。経糸を整え、緯糸を打ち込むのに使う。(*2)

織物組織(オリモノソシキ)
織物を作る経糸と緯糸の組み合わせ。基本的な組織は平織り・斜文(シャモン)織り・繻子(シュス)織りで、これを三原組織というが、絡み織りを加えて四原組織とすることもある。(*2)

絣(カスリ)
かすれたような部分を規則的に配した模様。また、その模様のある織物。(*2)
織糸に染加工を施して文様を現わす絣糸(カスリイト)を作り、これを織って布面に文様を織り出した織物の総称。綛・緕とも書く。(*4)

絣糸(カスリイト)
絣織物の絣柄を現わす糸。地糸に対していう。(*4)

ガチャマン、ガチャ万コラ千
(ガチャマンコラセン)

闇相場でガチャっと織ると1万円儲かり、経済警察の取り締まりに遭うと千円罰金が科せられても、差し引き9千円になることから言われた言葉。(*本書58、163頁)

カナキン(金巾)
綿布の一種。固く撚(ヨ)った糸で目を細かく織った薄地の広幅綿布。カネキン。(*2)

がら紡(ガラボウ)
《紡績の機械を回すときの、がらがらいう音から》落綿(ラクメン)・糸くず・布くずなどをほぐしたものから太い糸を製造する紡績法。またその織物。綿ネル・毛布・帯芯(オビシン)などの緯糸に使う。(*2)

ギャバジン(gabardine)
本来は中世に着用した丈の長いゆったりとした上張り。イギリスのバーバリー商会が自社のレーンコート地の商標にこの名を使って以来、その類の生地の普通名詞として使われる。
略してギャバ。なお、緻密な綾目を表わしたギャバに防水加工を施したものをバーバリーと呼ぶ。(*4)

キャラコ(calico)
糊づけし、つや出ししたカナキン。子供服、足袋などに使用。キャリコ。(*2)

京棧(織)(キョウザン)
綿縞織物の一種。京棧縞ともいう。東京都青梅地方で織られてからは青梅縞ともいう。京都産の棧留(サントメ)が原義。(*4)

強撚糸(キョウネンシ)
撚りのきわめて多い糸。撚りを強くかけると、糸中の繊維の緊縛が強くなり、糸中の空隙が少なくなり、糸はかたく、冷たく、丸くなる傾向がある。また、解撚してもとの状態にもどろうとする力を内在する。(*4)

管(クダ)
機(ハタ)の緯糸を巻いて杼(ヒ)に入れる道具。(*2)

管巻(クダマキ)
織機(ショッキ)の杼(ヒ)に入れる管に緯糸を巻きつけること。(*2)

コールテン(コール天)
《corded velveteen(畝織りのビロードの意)からか。「天」は天鵞絨(ビロード)の略》 「コーデュロイ」(corduroy)のこと。表面にけば立った縦畝(タテウネ)のある丈夫な綿織物。上着やズボンなどに用いる。(*2)

小倉織(コクラオリ)
もと九州の小倉地方で産出した綿織物。厚手で丈夫なところから帯・袴地(ハカマジ)のほか、作業服や学生服などに多く用いられた。
現在は岡山で産する。小倉縞(コクラジマ)。(*2)

小幅(織物)(コハバ)
幅13cmを超え45cm未満の織物。(*4)

サイジング(sizing)
インクのにじみを防ぐため、紙・織物などにサイズ(size)を塗ること。(*3)

サイズ(size)
インクのにじみを防ぐため、紙などの表面に塗布するか、または紙などの原料中に加える物質。膠(ニカワ)・ロジン・水ガラス・カゼインなど。(*3)

刺し子(サシコ)
綿布を重ね合わせて一針抜きに細かく刺し縫いにすること。また、そのように縫ったもの。丈夫なので柔道着・剣道着などに用いる。(*2)

縞織物(シマオリモノ)
縞模様を織り出した織物。縞物。縞織り。(*2)

ジャカード(jacquard)
ジャカード機で織られた紋織物(モンオリモノ)。ジャカード織り。(*2)ジャカード。(*5)

ジャカード機(ジャカードキ)
紋織物を織る機械の一種。穴をあけた紋紙の操作により、複雑な文様が織り出せる。1804年、フランスのジャカールが発明。ジャカール機。(*2)

ジンス(jeans)
細綾の一種。経糸、緯糸に20~40番手の綿糸を使用し、2/1アヤ織にした織物。(*4)

菖蒲縮(ショウブチヂミ)
昭和の初めから昭和40年頃まで、蕨やその付近で織られた綿縮のこと。(*5)

シャットル(shuttle)
織機の杼(ヒ)。シャトル。(*2)
「スペースシャトル」のシャトルと同単語。

繻子織(シュスオリ)
経糸と緯糸とが交差する点が連続することなく、経糸または緯糸だけが表に現れるような織り方。また、その織物。一般に経糸の浮きが多く、斜文織りよりさらに光沢がある。(*2)

人絹(ジンケン)
「人造絹糸」の略。(*2)

人造絹糸(ジンゾウケンシ)
天然の絹糸をまねて作った化学繊維。綿花・木材パルプなどの繊維素を薬品で溶かして加工したレーヨン・アセテートの長繊維をいう。人絹。(*2)

杉綾織(スギアヤオリ)
杉の葉のようなV字形を連続して織り出した織り方。また、その布地。毛織物に多い。杉綾。ヘリンボーン(herringbone)。(*2)

スダレ織(簾オリ)
タイヤコードをタテに使用し、スダレ状に織ったタイヤ用の織物。タイヤの芯布。(*4)スフ「ステープル‐ファイバー(staple fiber)」の略。
化学繊維を紡績用に短く切り、カールした繊維。特に、ビスコースレーヨンから作ったものをさす。(*2)

スルーザー織機(スルーザーショッキ)
ズルツァー織機。革新織機の一種。緯糸は大きなパッケージとして織機の外側に置き、長さ10cm程度の小さなシャットルを織機の一側から連続的に射出する。(*4)

スレーキ(sleek)
綿織物の一種。光輝金巾の名もある。布目は薄く、かたい手触りをもつ。主に洋服袖裏地に使う。(*4)

整経(セイケイ)
製織の準備工程で、経糸の必要な本数・長さ・張力などを揃えること。(*2)

整織(セイショク)
機械で織物を織り上げること。(*2)

精練(セイレン)
動植物繊維から夾雑物(キョウザツブツ)や蝋分(ロウブン)・脂肪・たんぱく質などを取り除く
こと。(*2)

綜絖(ソウコウ)
織機の部品の一つ。緯糸を通すために経糸を
上下に開く器具。あぜ。(*3)

高機(タカバタ、タカハタ)
手織り機の一種。腰板に腰掛け、踏み木を足で踏んで、2枚の綜絖を交互に上下させて織るもの。地機(ジバタ)より丈が高く、構造・機能の進歩した織機で、錦・綾などを織るのに用いる。大和機。(*2)

タペット(tappet)
内燃機関で、カムの運動を吸・排気弁に伝える棒状の部品。(*2)
本書でいうタペットは、経糸を繰る際に綾の口開けを上下させるための部品として取り付けてあるもの。平織用、三つ綾用、四つ綾用など多数ある。

チーズ(cheese)
木管または紙管などに糸を円筒状に巻いたもの。糸が崩れないように綾振は急角度とする。(*4)

縮み(チヂミ)
「縮織り」の略。(*2)

縮織(チヂミオリ)
撚りの強い緯糸を用い、織り上げたのちに温湯でもんでちぢませ、布面全体にしぼを表した織物。明石産や越後産のものが有名。多くは夏着に用いる。(*2)縮織り。

賃機(チンバタ、チンハタ)
機屋(ハタヤ)から糸などの原料を受け取り、賃銭を取って機を織ること。(*2)

紬(ツムギ)
紬糸(ツムギイト)で織った平織りの絹織物。大島紬・結城紬など。紬織り。(*2)

紬糸(ツムギイト)
屑繭(クズマユ)または真綿に手で縒りをかけて紡いだ太くて節の多い絹糸。(*2)

デニム(denim)
経糸に色糸、緯糸に漂白した糸を用いた、綾織りの厚地の綿布。ズボン、スポーツウエア、作業服などに用いる。(*2)

手紬糸、手紡糸(テツムギイト)
①綿花を早糸車で引き出しながら作った糸。
明治中頃まで盛んに行った。
②真綿から手工的に抽出した糸。絣糸ともいう。結城紬などの原料。(*4)

特紡糸(トクボウシ)
毛、絹を除いたくず原料を主体としてコンデンサを用いて紡績した糸。メリヤス裏糸・綿毛布・服地・敷物・モップなどに用いる。(*4)

ドビー織り(dobbyオリ)
ドビー機という複雑な織物に適した装置を使って織り出した小柄な模様織物の総称。平織りに柄の部分だけ他の糸を織り込んだ布地で、柄によりドビー格子、ドビー小格子などと呼ぶ。(*1)
綜絖の上下を制御する装置(dobby)を付設した織機で織った変わり織物。平織りの柄の部分だけに別の糸を織り込んだり、別の組織を用いて縞にしたものが多い。(*3)

ドリル(drill)
経糸、緯糸に18番手(綿番手)以下の糸を使用し、2/1または3/1綾織にした織物。(*4)

泥染(ドロゾメ)
大島紬の褐色を染める方法。大島紬の褐黒色は、タンニンや褐色色素を含む染料植物の煎汁で煮染した後、鉄分を多く含む泥、すなわ ち泥土液に浸して得る。(*4)

バーバリー(burberry)
防水加工した綿ギャバジン。また、それで作ったレインコート。英国のバーバリー社の商標名。(*2)

機(ハタ)
織物を織る道具。ふつう、動力化される以前の手機(テバタ)をいう。織機(ショッキ)。また、それで織った織物。(*2)

番手(バンテ)
紡績糸の太さを表す単位。重さ1ポンド(約454g)で長さ840ヤード(約768m)のものを1番手とする。長さが2倍、3倍のものを2番手、3番手とし、数が大きくなるほど糸は細くなる。(*2)

帆布(ハンプ)
船の帆などに用いる布。綿糸または麻糸で織った厚地の平織物。(*2)

杼(ヒ)
織機の付属用具の一つ。緯糸とする糸を巻いた管を、舟形の胴部の空所に収めたもの。端から糸を引き出しながら経糸の間を左右にくぐらせる。シャットル(shuttle)。(*2)

ビーム(beam)
糸や布を巻き取る木製、鉄製の円筒や棒またはワク。(*4)

平織(ヒラオリ)
経糸、緯糸を1本ずつ交差させて織っていく、最も基本的な織り方。また、その織物。平地(ヒラジ)。(*2)

広幅(織物)(ヒロハバ)
幅45cm以上の織物。(*4)

双子織(フタコオリ)
双子糸(2本の単糸を撚り合せた糸)を用いて平織りにした綿織物。双糸(ソウシ)織り。(*2)

太綾(フトアヤ)
ドリルの一種で、太さ10~18番手の綿糸を使用し、2/1綾織にした織物。綾木綿のうち最も多く生産する。用途は、寝具カバー・作業ズボン・袋・制服・帆布など。(*4)

別珍(ベッチン)
綿糸を用いて織り、毛羽(ケバ)を表面に出したビロード。女性、子供服地、足袋、鼻緒などに用いる。唐天(カラテン)。(*2)

細綾(ホソアヤ)
経糸、緯糸は太さ20番手以上(綿番手)で、ジンス、四つ綾、ギャバジン、スレーキ、横綾などの総称。ジンスともいう。丈夫な織物で、衣料用・工業用に広く用いる。(*4)

ポプリン(poplin)
木綿、絹、毛などを用い、横に細いうねを織り出した柔軟で光沢のある平織物。ワイシャツ、婦人子供服、カーテンなどに用いる。(*2)

ボビン(bobbin)
紡織用具の一つ。糸を巻いて整理する筒状または棒状のもの。(*2)

紋・文(モン)
物の表面に表された図形。綾。紋様。(*2)

紋織(モンオリ)
紋様を織り出すこと。また、その織物。(*2)

紋織物(モンオリモノ)
平織り・斜文織り・繻子(シュス)織りなど各種の組織を組み合わせ、また色糸を使って紋様を織り出した織物の総称。(*2)

紋柄(モンガラ)
模様の柄。紋様。(*2)

ヤール(yard)
《「ヤードをオランダ語風に読んだ「ヤールド」から」》ヤード(yard)のこと。主として織物の長さに用いる。(*2)

ヤール幅(ヤールハバ)
洋服地で1ヤール(約91cm)幅のもの。(*2)

吉野織(ヨシノオリ)
平織り時に畦織り(ウネオリ)を配して縞や格子を表した織物。吉野格子(ヨシノゴウシ)。(*2)

ラッセルレース(raschel lace)
ラッシェルレース。ラッシェル編機で編んだレース。編みながら紋様を出し、大量生産できる。(*4)

リング糸(ringイト)
飾り撚糸の一種。一般に練染した2種の色相の片撚糸を、一方は強く張って送り出し、他方はややゆるめて送り出し、互いに撚り絡ませた糸。(*4)

レーヨン(rayon,( 仏)rayonne)
再生セルロースから作る人造繊維。人造絹糸。溶解方法により、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテートがある。(*2)

レピア(rapier)
先端に糸をしごく部材、または把持できる部材を保有し、主軸に連動して往復運動する横入れの部品。(*4)

レピア織機(レピアショッキ)
レピアを用いて横入れする織機。他の機械と比べ、回転数はあまり高くないが、比較的多
数の横糸を使用できるなどの特色がある。(*4)

力織機(リキショッキ)
動力で動かす織機。1785年、英国のカートライトが発明した。(*2)
動力として蒸気機関を使用。19世紀に入り急速に普及。繊維業における産業革命を促進し
た。(*1)

〈出典〉
*1:『日本語大辞典』(第二版) 梅棹忠夫 他 監修   講談社 1995年
*2:『大辞泉』(増補・新装版) 松村明 監修 小学館 1998年
*3:『大辞林』(第三版) 松村明 編       三省堂 2006年
*4:『原色染織大辞典』 板倉寿郎 他 監修   淡交社 1977年
*5:『はたおりの町 わらび』 蕨市秘書広報課 編集発行 1944年